eラーニング・プログラム第12回
音声信号レベル(その1「マイクレベル」)
音声信号のレベルは、電圧値で表現されるのが一般的です。
音響/映像/舞台/放送などの技術者が扱う音声信号は、その電圧値によって大きく分けると3つ(分け方によっては4つ)の種類に分けられます。今日はその1種類目、「マイクレベル」について解説しましょう。
(1)マイクレベル
マイクロホンが空気振動を拾って、電気(音声信号)に変換しますが、その電気は非常に微弱なものです。
もちろん、マイクロホンが大きな音を拾えば、マイクロホンが送り出す音声信号レベルも大きくなりますが、それでも1mV(0.001V)〜100mV(0.1V)程度の信号にしかなりません。ミキサーやエフェクターなどの音響機器は、1V前後の信号レベルを扱うように設計されているものが多いので、マイクロホンから来た微弱な信号は、ミキサーの入口のすぐ後ろにあるマイクアンプ(別名Head Amp=HA)で1V前後の大きさになるよう、大幅に増幅するのです。
誰が増幅するか?もちろん、皆さん一人一人がその操作をして増幅するのです。
<マイクの入力感度>
なお、皆さんがマイクロホンを購入すると、そのマイクロホンの性能や仕様を記したスペック表(Spectifications=Spec.)が必ずついてきます。購入しなくても、マイクロホンメーカーのサイトを見れば、マイクロホンの名称/推奨用途/写真とともにスペック表が掲載されており、多くの場合、そのPDFもDL可能です。
マイクのスペック表には、必ず「入力感度」という項目があります。例えば、入力感度:−54dBV(「入力」と「V」は省略されている場合あり)というように書いてあります。これは、そのマイクが音をキャッチしたときに、どの程度の電気信号に変換して送り出してくれるか、ということを表記しています。つまりそのマイクが空気振動を電気(音声信号)に変換する効率を示しているのです。
もっと具体的に言えば、そのマイクが、大きさ:94dB(spl)/高さ:1000Hz(=1kHz)の音をキャッチしたときに、−54dBVの電気を送り出しているということを示しています。
ここで皆さんお気づきでしょうか。
マイクに入ってきた音(=空気振動)はdBsplで表示され、マイクから出ていく音声信号はdBV、つまり異なる単位で表示されているのです。
dBsplについては、0dBspl=20μPa でしたね?つまりマイクには、人間の最小可聴レベルより94dB大きい音(ややおとなしめのコンサート会場並みの音圧レベル)を入力していることになります。
スペック表によれば、94dBspl(=2,000,000μPa=1Pa)の音を拾ったこのマイクは、−54dBVの音声信号を生み出しているというわけですが、では、−54dBVとはどんなレベルなのでしょう?
まず覚えていただかねばならないのが、0dBV=1V と、電圧との関係性が規定されているということです。これはもう理屈でなく、覚えるしかありません。
ところで電圧は、+20dBで10倍、+40dBで100倍、+60dBで1000倍になります。そして+6dBで2倍です。これも覚えるしかありません。
また逆に、電圧は、−20dBで1/10、−40dBで1/100、−60dBで1/1000になります。+の場合の逆数になるわけです。
−54dB=−60dB+6dBなのはわかりますよね?はい、普通の足し算引き算ですからね。
−60dBは上に書いたように1/1000、そして+6dBは2倍なので、−54dB=1/1000×2=1/500となります。
つまり、−54dBV=1/500×1V=0.002V=2mV ということになります。
この−54dBVというのは、一般的なボーカルマイクロホンの入力感度と同等レベルですから、マイクロホンからミキサーなどに送られてくる音声信号レベルがいかに微小なレベルか、なんとなく想像できるのではないでしょうか。